結論
- 世界分散でブレを減らしたい=オルカン(全世界株式)
- 米国の成長を積極的に取りにいきたい=S&P500
- 家計の安全性やリスク許容度に合わせて “主軸:サテライト=8:2〜6:4” で配分を決める。
→私、個人の運用ではS&P500とオルカンの比率を8:2で保有しています。
目次
本記事のポイント
- オルカン(全世界株式)とS&P500の構造・地域配分・通貨の違いが3分でわかる
- 長期リターンの考え方、下落耐性(リスク)と為替の影響を実務目線で解説
- 具体的な**使い分けの指針(家計の状況別)**を提示
用語の整理
- オルカン:全世界の株式に時価総額比で分散投資するファンド(例:MSCI ACWI等に連動)。地域は米国が5〜6割、次に欧州・日本・新興国が続く。
- S&P500:米国の代表500社に投資。米国オンリー、セクターも時価総額比で構成。
まず覚えるべきは「オルカン=世界分散」「S&P500=米国集中」の一点。
1. ざっくり比較表
観点 | オルカン(全世界株式) | S&P500 |
---|---|---|
投資対象 | 先進国+新興国の株式(米国比率高め) | 米国大型株500社 |
分散効果 | 地域・通貨が広い(相対的に高い) | 米国に集中(分散は米国内のみ) |
為替影響 | 複数通貨に分散 | 米ドル一極 |
期待リターン | 世界平均並み(安定・中央値) | 米国の成長に賭ける(ブレ大きめ) |
リスク(下落幅) | 相対的に小さめ | 相対的に大きめ |
コスト(信託報酬) | 0.05〜0.12%台が中心 | 0.05〜0.10%台が中心 |
リバランス | 自動で世界配分に追随 | 米国偏重のまま |
向いている人 | 「ブレが少ない方が続けやすい」 | 「伸びる市場に集中したい」 |
コストは銘柄により差。最新の目論見書で要確認。
2. リターンとリスクの“現実感”
リターンの源泉
- オルカン:世界の経済成長の“平均点”を取る設計。米国の比率が高いため、結局は米国の影響が大きい。
- S&P500:米国のイノベーション(IT・ヘルスケア等)に強く連動。成長は取りやすいが、米国の失速=ダメージ直撃。
下落耐性(最大ドローダウンのイメージ)
- グローバル分散は局所的な不況を相殺しやすい。
- ただし、世界同時株安の局面ではどちらも下がる。S&P500は米国一極のぶん下落が深くなりがち。
長期投資では「平均リターンの差」だけでなく、下落時に握り続けられるかが勝敗を分ける。
3. 為替の影響
- S&P500:実質、米株+米ドルに二重で賭ける構図。円高局面では円ベースの評価額が目減りする。
- オルカン:米ドルだけでなくユーロ・円・新興国通貨にも分散。為替リスクが相対的に薄まる。
為替に自信がない人・家計が円中心の人には、オルカンの“通貨分散”は地味に効く。
4. コストと税制
- 信託報酬はどちらも低コスト化が進行。差は0.01〜0.03%台の範囲に収まることが多い。
- つみたてNISA対象商品が豊富。非課税枠の活用が最優先(課税口座での差益最適化より、まず非課税)
- 分配金は多くの低コスト投資信託が無分配・自動再投資。複利効果を最大化。
5. どっちを選ぶ?—タイプ別の指針
A. 家計の安全第一/値動きに弱い
- 主軸:オルカン 80%
- サテライト:S&P500 20%
- 狙い:世界平均で堅実に。米国の上振れも少し拾う。
B. リスク許容度中/世界も米国も取りたい
- オルカン 60%/S&P500 40%
- 狙い:為替・地域の偏りを緩和しつつ、成長源の米国を厚めに。
C. 攻め重視/米国の伸びに賭ける
- S&P500 80%+現金・債券の緩衝材
- 狙い:長期で上振れ期待。ただし下落時の握力が前提条件。
いずれも“正解”はなく、家計(収入の安定性・生活防衛資金)とメンタル耐性で決めるのが合理的。
6. 使い分けの実務(買い方の型)
- 積立の自動化:毎月同額でドルコスト。迷いを消す。
- 暴落時の追加ルール:VIXや指数下落率など客観指標でスポット購入(2〜3回に分ける)。
- 現金比率:最大下落を想定し、6〜12か月分の生活費+αを別枠で保持。
- 為替ヘッジ:基本は原則ヘッジなしでOK(長期投資は金利コストと相殺しやすい)。
7. よくある誤解と落とし穴
- 「オルカンは伸びない」→ 米国の比率が高いので、実際は米国の影響を強く受ける。完全な“世界平均”よりは米国寄り。
- 「S&P500だけで十分」→ 長期では機能しうるが、米国不調×円高の同時到来で打撃が大きい。
- 「コスト差だけで選ぶ」→ 長期で効くのは事実。ただし**続けられるか(メンタル)**の方が致命的に重要。
8. 具体的な商品選びの目安
- 指数の違い(例:eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)、全世界株式(オール・カントリー等)を確認
- 信託報酬・純資産・ベンチマーク乖離をチェック
- つみたてNISA対象なら優先
- 販売会社・SBI/楽天等のポイント還元も実利
商品名は各証券会社の最新ラインナップで確認。目論見書の更新に注意。
9. Q&A
Q1. どっちか一方だけにすべき?
A. 無理に一方に絞らなくて良い。8:2〜6:4の配分が現実的。
Q2. 円安が怖い。為替ヘッジは?
A. 長期の積立なら原則ヘッジなしでOK。ヘッジコストが複利を削る。
Q3. 今から始めても遅くない?
A. 長期投資は時間が最大の味方。今日がいちばん若い日。
Q4. 暴落が来たらやめるべき?
A. やめないためにこそ現金クッションと追加ルールを事前に用意。
10. まとめ
- 値動きに弱いならオルカン主軸/積極派ならS&P500厚め
- どちらでも**“続けられる仕組み”**(自動積立・現金クッション・追加ルール)が勝敗を分ける
- 家計の安全とメンタル耐性に合わせて、主軸:サテライト=8:2〜6:4で設計
投資は“正しさ”より“継続可能性”。あなたの生活に馴染む配分こそ最強です。